デビュー10周年アニバーサリー
◆近況報告
どうもご無沙汰ぶりでございます。
なんとなんと二年ぶりの更新です。
前回の記事でも「まる二年近く経っての更新ですぅ~」とか言ってるので、このブログはもう二年ごとに更新される定点観測的なものだと思って頂ければ幸いです。
ちなみにTwitterのほうもつぶやき頻度が激減しており、1ツイート1ツイートが生存報告めいております。
しかしまぁ本人は至って元気にやってました。
8年位ずーっとシナリオ書いてた某ソシャゲの制作会社が急に倒産して稼ぎの柱を一本失ったり(マジで急でビックリしました。会社が倒産するときって、周りにそれを悟られないように振る舞うものなのね……)、長年開発に携わってたゲームプロジェクトが頓挫したりと、かなりエキサイティングな2021年を送っています。ハハッ! ファックコロナ!
これだけ言うと「全然元気そうじゃねえ!」と思われるかもしれませんが、とりあえず体は健康そのものですし、メンタルのほうもそう悪くない感じです。
というのも、自分はかなりのドMで天の邪鬼気質なもので、こういう向かい風がビュンビュン吹いてる時のほうが妙にやる気出るんですよね。……いやこれ強がりとかじゃないですよ! ほんとに! 逆にみんながやる気出してると「じゃあ俺は頑張らなくていいかー(ハナホジー」とか言って手抜くタイプだから!
あとあれ、僕はけっこう悪運も強くて、こういう逆境のときに折よく新規のお仕事が降ってきたりもするんですよね。まさに捨てる神あれば拾う神あり。というかそのお仕事も日頃からお世話になってる人が振ってくれたものだったりするので、悪運云々ってよりは対人運ですね。強いのは。いや~、まっこと感謝。今後もたくさん秀章を気にかけてお世話してくださいね、関係者各位! よろしくお願いしますよ! ワンチームで秀章を保護保全してこ!
とまぁ僕の現況としてはそんな感じです。皆さんのほうはどうでしょう。
何かと息苦しい世の中ではありますが、どうにかこうにかでも元気にやれてますか?
生活の中で、何かを楽しんだりや安らいだりする時間は確保できてますか?
そうであってほしいなぁと切に祈ってます。
ファックコロナ。
◆7月20日
さて話は変わりまして、この記事の更新日は7月20日なのですが、実は特別な日だったりします。
なんの日かわかります? わかりますよね!? タイトルにも書いてあるもんね!?
そうです! 秀章のデビュー作である『脱兎リベンジ』が発売されたのが2011年の7月20日!
つまるところ、本日2021年7月20日をもちまして、秀章はデビュー10周年となるわけです!
おめでとう俺ーーー! よくがんばったーーー!イヤッフー
いやー、このコンテンツ業界も、特にライター業なんてのは水物商売みたいなところありますし、石を投げれば才人に当たるようなツワモノ揃いのフィールドですから、生存競争も激しいわけです。
そんな業界で細々とはいえ10年サバイブしてこられたのは、なかなかの快挙だと思いますよ我ながら!
ただもちろん、この快挙は自分ひとりの力で成し遂げたものではありません。
近況報告でも書きましたが、ここまで何とかやってこられたのは関係者各位のお力添えであったり、何よりも読者さん、ユーザーさんたちの応援、ご支援あってのことです。
だって割と直近の作品とかでも、感想やレビューをエゴサすると「秀章といえば脱兎リベンジ(デビュー作)のあの……!」とか「秀章って誰かと思えばGランDK(初期作品)の人か!」とかって声をチラホラ見かけますからね。
これつまり、自覚的にせよ無自覚的にせよかなりの長期スパンで秀章作品を追いかけてくれている(or結果として追いかける形になっている)読者さんがいるってことですからね!
はーーーーーーーっ、支えられてるわーーーーーーーーー自分。
なのでその感謝の気持ちを込めて、二年ぶりにブログを更新した次第です。
でまぁそもそもこのブログを読みにくる人なんて相当コアな秀章ファン、あるいはラノベファン、もしくは知り合いか何かでしょうから、ただ感謝の言葉を述べるだけじゃ味気ないし、物足りないでしょうと。
せっかくだからちょっとでもお楽しみ頂きたいなぁと。
じゃあ何を書けば喜んでもらえるかしらんと考えまして、ここはひとつ、こっ恥ずかしいですけど自著を一作ずつ振り返ってみようかと。
デビューから十年が経っていろいろな経験を積んだ、中堅作家・秀章の視点で過去の作品を語ってみようかなと思います!
その時々でどんなことを考えながら作品作りをしていたかなどを時系列順でまとめていくので、一人のラノベ作家の成長過程が見えてくるのではないでしょうか。
すでにここまででかなりの紙幅を割いちゃってますが、なにせ二年ぶりの更新ですから!
二年分の埋め合わせのつもりでゴリゴリ書くぞい!
超長いから適当に読み飛ばしてくれてOK!
ではレッツゴー
★ガガガ文庫『脱兎リベンジ』 2011/7/20


言わずとしれたデビュー作。多分ぶっちゃけ秀章作品の中で一番有名。
10年選手なんだからいい加減デビュー作を超える知名度の作品を出さなきゃならないのはわかってるんですけどねえ……これがなかなかムズカシイんですわガハハ!
ちなみに去年、プロの声優さんが朗読するオーディオブックとしても発売されまして、それのチェックのために云年ぶりとかに本作を読み返したりしたのですが……文章がカッッッッッッタイ!笑
いや、実はデビュー時に担当編集のGさんから「秀章さんは修飾過多というか情景描写がくどいところがあるので気をつけましょう」みたいなことを言われてはいて、当時は正直「は~ん? どこがぁ? 超いい文章なんだがぁ?」とか思ってたんですが……うん……完っっっっっ全にGさんのご指摘どおり!笑 今振り返ってみるとめちゃくちゃ肩肘張ってるというか「文章をうまく見せよう」「頭良さそうに見せたろう」みたいな性根が透けて見えて死ぬほど恥ずかしい! 一言で言えば未熟! 荒削り! この文章を声優さんに読ませるの!? ギャー! みたいな感じで身悶えしましたよ、ええ……。
でもまぁ逆に言えば、ちゃんとデビュー当時の未熟さを認識できる程度には成長してるんだなぁとは思いました。
あと文章力はともかくとして、ストーリー展開とか叙述トリックとかセリフのパンチラインなんかは相変わらず最高だしね?(自画自賛)
あとあとぶっちゃけこの時ほどの熱量を今出力できるかって言われたら無理だしね? いつだったか先輩作家の水無神さんに「この作品は若い人にしか書けないものだよ」みたいなことを言われたことがあって、それに対しても「は~ん? 秀章は一生死ぬまで熱い男なんですがぁ?」とか思ってたんですが……うん、これまた水無神さんのご指摘どおりすわ笑
もしかしたらちょっとがっかりさせてしまうかもしれませんが、色んな意味で、脱兎リベンジみたいな作品は今の僕には書けないと思います。これは、鬱屈を抱えまくっていたワナビーだったからこそ書けた小説でした。
……でもこれだけは念を押させてほしい。
脱兎リベンジとは別ベクトルかもしれませんが、〝面白さ指数〟でいえば脱兎リベンジに負けず劣らずな作品をこれまでも、そしてこれからも生み出せている自信はあるんですよ。……………………いや、ほんとよ? 常に自己ベスト更新中ですよ?
だからあとはちゃんと、その面白い作品でバチコーンと売り上げ出して、新たな代表作を作らなきゃなぁと思ってます。
見てろよ23歳(デビュー当時)の俺。酸いも甘いも噛み分けた、脂が乗りきった男の底力を見せてやる。
★ガガガ文庫『空知らぬ虹の解放区』 2012/5/18


二作目。全二巻。これ2010年くらいにですね、「青少年健全育成条例」つって漫画やアニメの性的表現を規制しよう(R18でゾーニングしよう)って条例が東京都で検討されまして、僕としてはとても問題のある条例だなぁと思い、題材として取り上げた小説になります。とはいえただ社会風刺や政治批判がしたかったわけではなく、誰が読んでも楽しめるエンタメ作品として成立させることは当たり前の大前提として念頭にありました。そして僕は結構クライム小説が好きでしたので、〝同人誌密造の地下組織〟というワンアイディアで自分なりのエンタメクライムラノベに仕立て上げたのでした。
またこの作品は軒原兄弟という二人の男性キャラのダブル主人公なのですが、「可愛いヒロインはきちんと出しつつも、ドラマの主軸は主人公(男)の物語」という後続の秀章作品でもよく見られる構造、方向性はここで確立されたかなぁという感じがします。「青エクとかハガレンみたいな男のダブル主人公でいかないか」と提案してきたのはGさんなのですが、Gさん的には「秀章は腐女子にリーチしうる」という狙いを密かに持ってたらしく、ダブル主人公の提案もそれが理由だったそうです。当時はそんなこと知らされてませんでしたが、後年の「サークルクラッシャーのあの娘、~」の時とかに知らされました。そして実際この路線が後々功を奏したりするので、G氏、策士である。
★ガガガ文庫『GランDKとダーティ・フェスタ』 2014/9/18


三作目。担当編集はG氏からK山氏にバトンタッチ。ちなみにK山氏はG氏の弟子的存在である。
「空知らぬ~」で一旦トリッキーな作品を出した後だったので、原点回帰というか脱兎リベンジ的なド王道青春モノをもう一回やろうぜという話になり企画された作品。個人的に青春もの作品といえば映画『ウォーターボーイズ』や金城一紀先生の『GO』、『ゾンビーズシリーズ』が大好きだったので、「オラもああいう男のバカノリと熱い友情を描いた作品を書きてえだ」となり、さらには当時の編集長が〝女装もの作品〟が好きだったので女装をネタにすれば企画通りやすいべみたいなところから、「男子高生が文化祭のミスコンに出場する」というお話が生まれました。
それと、脱兎リベンジも空知らぬも、「大枠のストーリーからキャラを考える」という作り方をしていたのですが、ラノベってやっぱりキャラ立ちが大事だし、キャラ造形(ケレン味、フック、個性)の弱さみたいなのは自分の弱点だなぁと反省していた時期だったので、本作は「まずキャラありき」で作っていったような記憶があります。たしか。
そのおかげかかなり個性的なキャラが生まれたなぁと満足してます。主人公の一茶も熱い男なので大好きですが、自分的にはエドとフッティーが死ぬほどカッコいいと思ってます。あと校長と教頭のコンビ。つーか猿男の連中は全員最高!
反省点はひたすらタイトルがわかりづらいこと。普通に「男子高校生がミスコンに出場してみた」みたいな長文タイトルにしとけばよかった。ふひ。
★ダッシュエックス文庫『ジョーカーズ!!』 2015/6/25


デビュー10周年で初めて公になる新事実。
実は僕、ノギノアキゾウという別名義でダッシュエックス文庫さんから刊行させて頂いたことがあります。なぜ別名義かはまぁオトナの事情ってやつなんですが、詳しくはデビュー20周年で明かすとしましょう。笑
こちらの企画は、「おらもIWGPとかデュラララ!!みたいなストリート感のある作品を書きてえだ」ってのと「異能力バトル書きてえだ」っていう願望をダッシュエックスさんが叶えてくれた形です。この作品にはビジュアル面で僕の趣味が詰まりまくってて、主人公の男の子の勝負服がブルースブラザーズみたいな黒スーツにレイバンだったり、幼馴染ヒロインが黒ギャルだったり、脇を固めるキャラもかなりいかしたキャラデザに仕上がっています。群青ピズさんが僕のイメージをかなり素晴らしいデザインに昇華してくださいまして、ありがたやです。
「アプリで異能力が手に入って、その異能力の使った動画を投稿して〝いいね〟が集まれば集まるほど能力の性能が向上していく」っていう設定も、我ながらいいアイディアだなーと。フフン。
またGランに引き続きキャラ造形はかなりこだわりまして、主人公に手を貸してくれる『IKB椿屋ポッセ』っていうアウトロー集団は個性派揃いだし決めるところをビシッと決めてくれるしで、我ながら最高な感じです。
秀章作品をコンプリートしてる人がいるかどうかわかりませんが、実はここに裏秀章作品が存在するので、未読の方は是非ポチってください! 上の画像からアマゾンのページに飛べます! さぁ買った買った!
★角川スニーカー文庫『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』 2016/11/1


全二巻。KADOKAWAに転職した元ガガガ文庫初代担当G氏と再びタッグを組んで世に送り出した問題作。
ヒロインが誰とでも寝ちゃう天使サークルクラッシャーであるため、耐性がない方からはとことん拒絶反応を食らいました。笑
まーねー、そのへんは好みの問題だからしょうがないですねー。
ただねー。自分で言うのもなんですが小説の質としてはかなりいい線いってると自負してますし、業界内での評価も脱兎リベンジばりに高かったんですよ! いやこれマジで!
滅多に担当作品を褒めないG氏が手放しで絶賛してきましたし、結構各所で同業の作家さんからお褒めの言葉を頂いたり、後々お仕事をご一緒させてもらう講談社ラノベ文庫の名物編集Sさんも、この作品で自分に興味を持ってくれたらしいです。
そんでこの作品こそ、「空知らぬ~」で形作られた秀章作品の「可愛いヒロインはきちんと出しつつも、ドラマの主軸は主人公(男)の物語」のひとつ集大成、ひとつの到達点みたいな作品で、さっきサークルクラッシャーの〝ヒロイン〟なんて言いましたけど、実はサークルクラッシャーのこの女の子をヒロインとして描くつもりなんてサラサラなかったんですよ。このサークルクラッシャーの女の子は、男たちの友情を乱す〝敵・障害〟であり、男たちの友情の再生こそが描きたかったドラマなんです。
だからまぁ「サークルクラッシャーの女の子(ヒロイン)となんだかんだラブコメする」みたいな作品を期待してくれてた読者さんが楽しめないのは当然なんですよね。
僕はこの作品が大好きだし、こういう作品を書ききった(いやまぁもっとシリーズ化はしたかったけど!)ことに何の後悔もなく満足していますが、ただ「読者がパッケージやあらすじから期待する物語を、ちゃんと期待に沿った形で提供する」っていう、いわゆる「予想は裏切り期待は裏切らない」ってやつの大切や重要性を学んだ企画ではありました。
どんなに「質が高い作品を生み出したぜー」とか自信を持とうが、読者の期待を裏切るのはよろしくないなと、そう反省しました。あるいはちゃんと、「この作品の楽しみ方の導線」みたいなものを提示できなかったのもよくなかったのかなぁ……。「このサークルクラッシャーの女は敵役! この女に振り回される男どもを愛でてあげて!」って、そういう導線をちゃんと引けていればもっと多くの人に受け入れてもらえたのでは……。小説はムズカシイ (>_<)
ただ、男の友情にがっつりフォーカスを当てた作品でしたので、腐女子の同業者から熱い感想を頂いたり、女性読者の方から「秀章さんって女性の作者かと思いました」というお言葉を頂いたりと、G氏の目論見通りに腐女子にリーチしうる作品を生み出せている模様です!ヤッタネ
それと本作についてはそこあにさんのインタビューでもたくさん語ってますので興味あれば是非どうぞ。秀章の肉声が聴ける!
★ガルドコミックス『黒鐵のイド』 2019/4/25


メカ系に強いイラストレーターの黒銀さんの原案・作画、そして原作に秀章という布陣で作られた漫画。ダークヒーローテイストなSFメカバトルになります。オーバーラップのコミックガルドさんの方で連載させてもらってました。
役割分担としては黒銀さんの「こういうメカとか描写を描きたい!」といったイメージボードや、「こういう話好き!」みたいな大まかな構想を、僕のほうで取りまとめて脚本レベルにまで落とし込んでいったというような形です。黒銀さん自身も脚本術というかお話づくりみたいなものをかなりロジカルに考えられる人なので、話が早いというか、すごく制作しやすかったです。てかほぼほぼストーリーも二人三脚で作らせて頂きました。単なる自分の好き嫌いでお話づくりを語る人もいましてね……そういう人との作業は大変なんですよ……(愚痴)
世界観が世界観なので、秀章のダークサイドがほとばしり、ゴリゴリにシリアス&ハードボイルドな仕上がりとなっております。ただ物語的に「さぁここからさらに盛り上がっていくぞ!」ってところであえなく連載中止となってしまいました……。登場人物たちの相関関係やロングプロットなどもかなり練り込んでいたのですが……。というわけで無念の全一巻。
でも商業媒体で漫画原作をやらせてもらえたことで経験値を大幅アップです。
僕はラノベでデビューしましたが、〝小説を書きたい〟というよりも〝小説でもゲームでも脚本でも漫画でも何でもいいからお話が作りたい〟というスタンスです。なのでゲームのシナリオ、テキスト作成もやっていますし、それこそいつかは漫画原作やアニメ、映画の脚本なんかも書いてみたいと思っていました。僕の作家としての最終目標なんて「日本でピクサー映画(的な作品)を作る」ですからね。
ですのでこの企画で、目標の一つを果たすことが出来ました。一から十まで自分一人で作る小説もいいけど、協力して作り上げていく漫画原作も楽しいなー。漫画原作は絶対またやりたいです。なので関係者各位よろしく~!
★ガガガ文庫『先日助けていただいたNPCです ~年上な奴隷エルフの恩返し~』 2019/7/18


全二巻。ここまで来ると体感的には〝最近の作品〟という感じです。担当は変わらずK山氏。
これまで「男の友情!!」みたいなところにフォーカスを当てて来た自分が、思い切って「書きたいヒロインキャラ」に焦点を当てた作品――のはずが、今読み返してみると結局主人公寝津の青春物語になってるような……笑
っかー! いっけねー! これもう作家性ってやつだわー! 抑えようとしても結局出ちゃうわー! 呪いだわもはやー!
とはいえやっぱり女キャラをたくさん出せたのは楽しかったです。
イノさんはもちろんお気に入りなんだけど、思いのほか木瀬さんがいいキャラに育ったなぁという印象です。
内面も外面も徐々に成長していくコミュ障キャラ……いい……! とてもいいぞ! 隙きあらば今後も自作に出していこう。
宮柳もチェルノボーグもいいキャラなんよなー。
なんか、「あれ? 俺ちゃんと女キャラも可愛く書けてね!? いいじゃんいいじゃん! いけるじゃん!」みたいな自信に繋がった一作。ただ過去作で一番、編集からの赤(修正指示、ツッコミ、要するにダメ出し)が多かった作品でもあったような気もする。ぐぬぬ。
またNPCに関してはすっかりツーカーの関係になったそこあにさんのインタビューでも語ってます! よしなに。
★講談社ラノベ文庫『ヤンキーやめろ。メイドにしてやる』 2020/2/3


「サークルクラッシャー」を読んでくださった講談社ラノベ文庫の名物編集S氏が自分に興味を持ってくれた縁で作り上げた一作。
これもNPCのときと同じで「書きたいヒロインキャラ」先行で練っていった企画で、なろうのほうで趣味で書いてた『10才にして保健室の先生とかいう、《ぐう聖母》ミナちゃん』に登場するヤンキー娘、朱雀井小碧がすごくいいキャラだったので、この子をメインヒロインに据えてなんか書きたいなぁと。とはいえヤンキー娘ってだけじゃ引きが弱いからメイド要素も足して……みたいな感じで作っていきました。
またサークルクラッシャーのときの反省「予想は裏切り期待は裏切らない」を今回は活かし、タイトルやパッケージ、ヤンキーメイドというワードから読者が期待しているであろう内容をちゃんと提供するということも重視しました。
それでエゴサしてみたら結構「期待したようなヤンキー娘でした!」みたいな声が多くて、めちゃくちゃ嬉しかったです。笑
あとこれ我ながらお仕事ラブコメとしてかなり上手く書けてると思うんだよなー……。
ラストのヤンキーメイド・ハナちゃんの大立ち回りなんてめちゃくちゃカッコよく書けたと思いますよ、ええ。
この作品もそこあにさんにインタビューして頂いたので是非聴いてちょ。
☆同人誌『先輩と後輩』 2020/12/30

→メロンブックスさんの購入先リンク。電子書籍もあるヨ!
こちらは番外編みたいなもんですが、親しい作家さんと同人サークル『七味唐辛紙』を立ち上げまして、2020年のコミケで頒布しようと思ってたら例のファッキンウイルスのせいで泣く泣く委託販売になった代物。『先輩と後輩』というテーマで七人のラノベ作家が寄稿したアンソロ同人小説です。
僕は自分自身が大学生時代にクライミングサークルに入っていて、今もボルダリングを趣味でやってる人間なので、大学のボルダリングサークルの先輩(僕)と後輩(ギャル)の話を書きました。短編ですがこれまたサクッときれいにまとまったなって感じでお気に入りです。どっかでボルダリング小説書かせてくれんかなー。
――以上、秀章全作品振り返りでした!
長い! 全部に目を通した人はもう立派な秀章ファンだわ。アミーゴと呼ばせてくれ!
なんかちょっとでも「へ~」とか「ほえ~」とか発見やら面白みやらを感じてもらえたら幸いです。
◆結び
どうにかこうにか10年間、ラノベ作家を続けることが出来ました。(今年は本出してないけど笑)
重ね重ねになりますが、これもひとえに関係者各位と読者の皆様とおかげだと感謝しております。
本当にありがとうございます。
脱兎リベンジの項目でも軽く触れましたが、デビュー当時と今の自分、作家としての心持ちはガラッと変わっています。
まず作品作りに対するモチベーションが変わりました。
昔は「俺を見ろ!」的な、自己表現というよりもむしろ自己顕示欲に近いような情念が多分にあったような気がしますが、今は「楽しんでくれたら嬉しいぜーい」って感じでしょうか。今も昔も「エンタメ志向」であることは変わらないですし、「自分のために書いている」ことも変わってないんですが、昔は「読者を楽しませることで自分の存在意義を確立させたい(切迫感)」といった感じだったのが、今は「読者に楽しんでもらえたら嬉しいから書くー(シンプル)」みたいな感じでしょうか。だからなんかたぶん、我欲ってものがなくなったんだと思います。……別に「売れなくてもいい!」とか思ってるわけではないですけどね?笑 そりゃ普通にヒット作出してお金はほしい!
あとは根拠のない自信とか全能感みたいなのもなくなりました。いや、今でも「俺天才だろ……ぐふふ」みたいな自惚れは普通にあるんですが、その一方で「まぁでも全然まだまだだね」って思いも強くある。
また昔以上に文章を書くのに体力や気力が消耗されるようになって「めんどくせー」とか思うことが多くなりました。ただそれでも、テキストを書き始めるとやっぱり楽しいし、作品の感想をエゴサしたりして好意的な声を見聞きすると、「くぅ~! こりゃやめられんわい!」となります。
……あー……。
それと……。
これはもう結構前からですが……このブログのタイトルが我ながらクサイというかこっ恥ずかしく感じるようになりました。笑
『明日に向ってガンフィンガー』て、カッコつけすぎィ~。笑
まぁまぁまぁ、それでもですよ。昔の心持ちも当時の自分にとっては正義だったし、楽しかったし、そういう心持ちであったからこそ生み出せたもの、得られたものもたくさんありましたから、OKです。
そして、そこからさらに少しずつ変化して至った今は、僕の主観では昔以上にいい感じです。
なので、いつまで続くかはわかりませんが、もう少しこの業界で楽しい思いをさせてもらおうと思ってます。
新企画も仕込み中(題材はちょっと変わってるけど、ストレートな青春ものの予定だよ!)ですので、お付き合い頂けたら幸いです。
それではまた二年後に。笑
アディオス、グラシアス、アミーゴ。
どうもご無沙汰ぶりでございます。
なんとなんと二年ぶりの更新です。
前回の記事でも「まる二年近く経っての更新ですぅ~」とか言ってるので、このブログはもう二年ごとに更新される定点観測的なものだと思って頂ければ幸いです。
ちなみにTwitterのほうもつぶやき頻度が激減しており、1ツイート1ツイートが生存報告めいております。
しかしまぁ本人は至って元気にやってました。
8年位ずーっとシナリオ書いてた某ソシャゲの制作会社が急に倒産して稼ぎの柱を一本失ったり(マジで急でビックリしました。会社が倒産するときって、周りにそれを悟られないように振る舞うものなのね……)、長年開発に携わってたゲームプロジェクトが頓挫したりと、かなりエキサイティングな2021年を送っています。ハハッ! ファックコロナ!
これだけ言うと「全然元気そうじゃねえ!」と思われるかもしれませんが、とりあえず体は健康そのものですし、メンタルのほうもそう悪くない感じです。
というのも、自分はかなりのドMで天の邪鬼気質なもので、こういう向かい風がビュンビュン吹いてる時のほうが妙にやる気出るんですよね。……いやこれ強がりとかじゃないですよ! ほんとに! 逆にみんながやる気出してると「じゃあ俺は頑張らなくていいかー(ハナホジー」とか言って手抜くタイプだから!
あとあれ、僕はけっこう悪運も強くて、こういう逆境のときに折よく新規のお仕事が降ってきたりもするんですよね。まさに捨てる神あれば拾う神あり。というかそのお仕事も日頃からお世話になってる人が振ってくれたものだったりするので、悪運云々ってよりは対人運ですね。強いのは。いや~、まっこと感謝。今後もたくさん秀章を気にかけてお世話してくださいね、関係者各位! よろしくお願いしますよ! ワンチームで秀章を保護保全してこ!
とまぁ僕の現況としてはそんな感じです。皆さんのほうはどうでしょう。
何かと息苦しい世の中ではありますが、どうにかこうにかでも元気にやれてますか?
生活の中で、何かを楽しんだりや安らいだりする時間は確保できてますか?
そうであってほしいなぁと切に祈ってます。
ファックコロナ。
◆7月20日
さて話は変わりまして、この記事の更新日は7月20日なのですが、実は特別な日だったりします。
なんの日かわかります? わかりますよね!? タイトルにも書いてあるもんね!?
そうです! 秀章のデビュー作である『脱兎リベンジ』が発売されたのが2011年の7月20日!
つまるところ、本日2021年7月20日をもちまして、秀章はデビュー10周年となるわけです!
おめでとう俺ーーー! よくがんばったーーー!イヤッフー
いやー、このコンテンツ業界も、特にライター業なんてのは水物商売みたいなところありますし、石を投げれば才人に当たるようなツワモノ揃いのフィールドですから、生存競争も激しいわけです。
そんな業界で細々とはいえ10年サバイブしてこられたのは、なかなかの快挙だと思いますよ我ながら!
ただもちろん、この快挙は自分ひとりの力で成し遂げたものではありません。
近況報告でも書きましたが、ここまで何とかやってこられたのは関係者各位のお力添えであったり、何よりも読者さん、ユーザーさんたちの応援、ご支援あってのことです。
だって割と直近の作品とかでも、感想やレビューをエゴサすると「秀章といえば脱兎リベンジ(デビュー作)のあの……!」とか「秀章って誰かと思えばGランDK(初期作品)の人か!」とかって声をチラホラ見かけますからね。
これつまり、自覚的にせよ無自覚的にせよかなりの長期スパンで秀章作品を追いかけてくれている(or結果として追いかける形になっている)読者さんがいるってことですからね!
はーーーーーーーっ、支えられてるわーーーーーーーーー自分。
なのでその感謝の気持ちを込めて、二年ぶりにブログを更新した次第です。
でまぁそもそもこのブログを読みにくる人なんて相当コアな秀章ファン、あるいはラノベファン、もしくは知り合いか何かでしょうから、ただ感謝の言葉を述べるだけじゃ味気ないし、物足りないでしょうと。
せっかくだからちょっとでもお楽しみ頂きたいなぁと。
じゃあ何を書けば喜んでもらえるかしらんと考えまして、ここはひとつ、こっ恥ずかしいですけど自著を一作ずつ振り返ってみようかと。
デビューから十年が経っていろいろな経験を積んだ、中堅作家・秀章の視点で過去の作品を語ってみようかなと思います!
その時々でどんなことを考えながら作品作りをしていたかなどを時系列順でまとめていくので、一人のラノベ作家の成長過程が見えてくるのではないでしょうか。
すでにここまででかなりの紙幅を割いちゃってますが、なにせ二年ぶりの更新ですから!
二年分の埋め合わせのつもりでゴリゴリ書くぞい!
超長いから適当に読み飛ばしてくれてOK!
ではレッツゴー
★ガガガ文庫『脱兎リベンジ』 2011/7/20
言わずとしれたデビュー作。多分ぶっちゃけ秀章作品の中で一番有名。
10年選手なんだからいい加減デビュー作を超える知名度の作品を出さなきゃならないのはわかってるんですけどねえ……これがなかなかムズカシイんですわガハハ!
ちなみに去年、プロの声優さんが朗読するオーディオブックとしても発売されまして、それのチェックのために云年ぶりとかに本作を読み返したりしたのですが……文章がカッッッッッッタイ!笑
いや、実はデビュー時に担当編集のGさんから「秀章さんは修飾過多というか情景描写がくどいところがあるので気をつけましょう」みたいなことを言われてはいて、当時は正直「は~ん? どこがぁ? 超いい文章なんだがぁ?」とか思ってたんですが……うん……完っっっっっ全にGさんのご指摘どおり!笑 今振り返ってみるとめちゃくちゃ肩肘張ってるというか「文章をうまく見せよう」「頭良さそうに見せたろう」みたいな性根が透けて見えて死ぬほど恥ずかしい! 一言で言えば未熟! 荒削り! この文章を声優さんに読ませるの!? ギャー! みたいな感じで身悶えしましたよ、ええ……。
でもまぁ逆に言えば、ちゃんとデビュー当時の未熟さを認識できる程度には成長してるんだなぁとは思いました。
あと文章力はともかくとして、ストーリー展開とか叙述トリックとかセリフのパンチラインなんかは相変わらず最高だしね?(自画自賛)
あとあとぶっちゃけこの時ほどの熱量を今出力できるかって言われたら無理だしね? いつだったか先輩作家の水無神さんに「この作品は若い人にしか書けないものだよ」みたいなことを言われたことがあって、それに対しても「は~ん? 秀章は一生死ぬまで熱い男なんですがぁ?」とか思ってたんですが……うん、これまた水無神さんのご指摘どおりすわ笑
もしかしたらちょっとがっかりさせてしまうかもしれませんが、色んな意味で、脱兎リベンジみたいな作品は今の僕には書けないと思います。これは、鬱屈を抱えまくっていたワナビーだったからこそ書けた小説でした。
……でもこれだけは念を押させてほしい。
脱兎リベンジとは別ベクトルかもしれませんが、〝面白さ指数〟でいえば脱兎リベンジに負けず劣らずな作品をこれまでも、そしてこれからも生み出せている自信はあるんですよ。……………………いや、ほんとよ? 常に自己ベスト更新中ですよ?
だからあとはちゃんと、その面白い作品でバチコーンと売り上げ出して、新たな代表作を作らなきゃなぁと思ってます。
見てろよ23歳(デビュー当時)の俺。酸いも甘いも噛み分けた、脂が乗りきった男の底力を見せてやる。
★ガガガ文庫『空知らぬ虹の解放区』 2012/5/18
二作目。全二巻。これ2010年くらいにですね、「青少年健全育成条例」つって漫画やアニメの性的表現を規制しよう(R18でゾーニングしよう)って条例が東京都で検討されまして、僕としてはとても問題のある条例だなぁと思い、題材として取り上げた小説になります。とはいえただ社会風刺や政治批判がしたかったわけではなく、誰が読んでも楽しめるエンタメ作品として成立させることは当たり前の大前提として念頭にありました。そして僕は結構クライム小説が好きでしたので、〝同人誌密造の地下組織〟というワンアイディアで自分なりのエンタメクライムラノベに仕立て上げたのでした。
またこの作品は軒原兄弟という二人の男性キャラのダブル主人公なのですが、「可愛いヒロインはきちんと出しつつも、ドラマの主軸は主人公(男)の物語」という後続の秀章作品でもよく見られる構造、方向性はここで確立されたかなぁという感じがします。「青エクとかハガレンみたいな男のダブル主人公でいかないか」と提案してきたのはGさんなのですが、Gさん的には「秀章は腐女子にリーチしうる」という狙いを密かに持ってたらしく、ダブル主人公の提案もそれが理由だったそうです。当時はそんなこと知らされてませんでしたが、後年の「サークルクラッシャーのあの娘、~」の時とかに知らされました。そして実際この路線が後々功を奏したりするので、G氏、策士である。
★ガガガ文庫『GランDKとダーティ・フェスタ』 2014/9/18
三作目。担当編集はG氏からK山氏にバトンタッチ。ちなみにK山氏はG氏の弟子的存在である。
「空知らぬ~」で一旦トリッキーな作品を出した後だったので、原点回帰というか脱兎リベンジ的なド王道青春モノをもう一回やろうぜという話になり企画された作品。個人的に青春もの作品といえば映画『ウォーターボーイズ』や金城一紀先生の『GO』、『ゾンビーズシリーズ』が大好きだったので、「オラもああいう男のバカノリと熱い友情を描いた作品を書きてえだ」となり、さらには当時の編集長が〝女装もの作品〟が好きだったので女装をネタにすれば企画通りやすいべみたいなところから、「男子高生が文化祭のミスコンに出場する」というお話が生まれました。
それと、脱兎リベンジも空知らぬも、「大枠のストーリーからキャラを考える」という作り方をしていたのですが、ラノベってやっぱりキャラ立ちが大事だし、キャラ造形(ケレン味、フック、個性)の弱さみたいなのは自分の弱点だなぁと反省していた時期だったので、本作は「まずキャラありき」で作っていったような記憶があります。たしか。
そのおかげかかなり個性的なキャラが生まれたなぁと満足してます。主人公の一茶も熱い男なので大好きですが、自分的にはエドとフッティーが死ぬほどカッコいいと思ってます。あと校長と教頭のコンビ。つーか猿男の連中は全員最高!
反省点はひたすらタイトルがわかりづらいこと。普通に「男子高校生がミスコンに出場してみた」みたいな長文タイトルにしとけばよかった。ふひ。
★ダッシュエックス文庫『ジョーカーズ!!』 2015/6/25
デビュー10周年で初めて公になる新事実。
実は僕、ノギノアキゾウという別名義でダッシュエックス文庫さんから刊行させて頂いたことがあります。なぜ別名義かはまぁオトナの事情ってやつなんですが、詳しくはデビュー20周年で明かすとしましょう。笑
こちらの企画は、「おらもIWGPとかデュラララ!!みたいなストリート感のある作品を書きてえだ」ってのと「異能力バトル書きてえだ」っていう願望をダッシュエックスさんが叶えてくれた形です。この作品にはビジュアル面で僕の趣味が詰まりまくってて、主人公の男の子の勝負服がブルースブラザーズみたいな黒スーツにレイバンだったり、幼馴染ヒロインが黒ギャルだったり、脇を固めるキャラもかなりいかしたキャラデザに仕上がっています。群青ピズさんが僕のイメージをかなり素晴らしいデザインに昇華してくださいまして、ありがたやです。
「アプリで異能力が手に入って、その異能力の使った動画を投稿して〝いいね〟が集まれば集まるほど能力の性能が向上していく」っていう設定も、我ながらいいアイディアだなーと。フフン。
またGランに引き続きキャラ造形はかなりこだわりまして、主人公に手を貸してくれる『IKB椿屋ポッセ』っていうアウトロー集団は個性派揃いだし決めるところをビシッと決めてくれるしで、我ながら最高な感じです。
秀章作品をコンプリートしてる人がいるかどうかわかりませんが、実はここに裏秀章作品が存在するので、未読の方は是非ポチってください! 上の画像からアマゾンのページに飛べます! さぁ買った買った!
★角川スニーカー文庫『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』 2016/11/1
全二巻。KADOKAWAに転職した元ガガガ文庫初代担当G氏と再びタッグを組んで世に送り出した問題作。
ヒロインが誰とでも寝ちゃう
まーねー、そのへんは好みの問題だからしょうがないですねー。
ただねー。自分で言うのもなんですが小説の質としてはかなりいい線いってると自負してますし、業界内での評価も脱兎リベンジばりに高かったんですよ! いやこれマジで!
滅多に担当作品を褒めないG氏が手放しで絶賛してきましたし、結構各所で同業の作家さんからお褒めの言葉を頂いたり、後々お仕事をご一緒させてもらう講談社ラノベ文庫の名物編集Sさんも、この作品で自分に興味を持ってくれたらしいです。
そんでこの作品こそ、「空知らぬ~」で形作られた秀章作品の「可愛いヒロインはきちんと出しつつも、ドラマの主軸は主人公(男)の物語」のひとつ集大成、ひとつの到達点みたいな作品で、さっきサークルクラッシャーの〝ヒロイン〟なんて言いましたけど、実はサークルクラッシャーのこの女の子をヒロインとして描くつもりなんてサラサラなかったんですよ。このサークルクラッシャーの女の子は、男たちの友情を乱す〝敵・障害〟であり、男たちの友情の再生こそが描きたかったドラマなんです。
だからまぁ「サークルクラッシャーの女の子(ヒロイン)となんだかんだラブコメする」みたいな作品を期待してくれてた読者さんが楽しめないのは当然なんですよね。
僕はこの作品が大好きだし、こういう作品を書ききった(いやまぁもっとシリーズ化はしたかったけど!)ことに何の後悔もなく満足していますが、ただ「読者がパッケージやあらすじから期待する物語を、ちゃんと期待に沿った形で提供する」っていう、いわゆる「予想は裏切り期待は裏切らない」ってやつの大切や重要性を学んだ企画ではありました。
どんなに「質が高い作品を生み出したぜー」とか自信を持とうが、読者の期待を裏切るのはよろしくないなと、そう反省しました。あるいはちゃんと、「この作品の楽しみ方の導線」みたいなものを提示できなかったのもよくなかったのかなぁ……。「このサークルクラッシャーの女は敵役! この女に振り回される男どもを愛でてあげて!」って、そういう導線をちゃんと引けていればもっと多くの人に受け入れてもらえたのでは……。小説はムズカシイ (>_<)
ただ、男の友情にがっつりフォーカスを当てた作品でしたので、腐女子の同業者から熱い感想を頂いたり、女性読者の方から「秀章さんって女性の作者かと思いました」というお言葉を頂いたりと、G氏の目論見通りに腐女子にリーチしうる作品を生み出せている模様です!ヤッタネ
それと本作についてはそこあにさんのインタビューでもたくさん語ってますので興味あれば是非どうぞ。秀章の肉声が聴ける!
★ガルドコミックス『黒鐵のイド』 2019/4/25
メカ系に強いイラストレーターの黒銀さんの原案・作画、そして原作に秀章という布陣で作られた漫画。ダークヒーローテイストなSFメカバトルになります。オーバーラップのコミックガルドさんの方で連載させてもらってました。
役割分担としては黒銀さんの「こういうメカとか描写を描きたい!」といったイメージボードや、「こういう話好き!」みたいな大まかな構想を、僕のほうで取りまとめて脚本レベルにまで落とし込んでいったというような形です。黒銀さん自身も脚本術というかお話づくりみたいなものをかなりロジカルに考えられる人なので、話が早いというか、すごく制作しやすかったです。てかほぼほぼストーリーも二人三脚で作らせて頂きました。単なる自分の好き嫌いでお話づくりを語る人もいましてね……そういう人との作業は大変なんですよ……(愚痴)
世界観が世界観なので、秀章のダークサイドがほとばしり、ゴリゴリにシリアス&ハードボイルドな仕上がりとなっております。ただ物語的に「さぁここからさらに盛り上がっていくぞ!」ってところであえなく連載中止となってしまいました……。登場人物たちの相関関係やロングプロットなどもかなり練り込んでいたのですが……。というわけで無念の全一巻。
でも商業媒体で漫画原作をやらせてもらえたことで経験値を大幅アップです。
僕はラノベでデビューしましたが、〝小説を書きたい〟というよりも〝小説でもゲームでも脚本でも漫画でも何でもいいからお話が作りたい〟というスタンスです。なのでゲームのシナリオ、テキスト作成もやっていますし、それこそいつかは漫画原作やアニメ、映画の脚本なんかも書いてみたいと思っていました。僕の作家としての最終目標なんて「日本でピクサー映画(的な作品)を作る」ですからね。
ですのでこの企画で、目標の一つを果たすことが出来ました。一から十まで自分一人で作る小説もいいけど、協力して作り上げていく漫画原作も楽しいなー。漫画原作は絶対またやりたいです。なので関係者各位よろしく~!
★ガガガ文庫『先日助けていただいたNPCです ~年上な奴隷エルフの恩返し~』 2019/7/18
全二巻。ここまで来ると体感的には〝最近の作品〟という感じです。担当は変わらずK山氏。
これまで「男の友情!!」みたいなところにフォーカスを当てて来た自分が、思い切って「書きたいヒロインキャラ」に焦点を当てた作品――のはずが、今読み返してみると結局主人公寝津の青春物語になってるような……笑
っかー! いっけねー! これもう作家性ってやつだわー! 抑えようとしても結局出ちゃうわー! 呪いだわもはやー!
とはいえやっぱり女キャラをたくさん出せたのは楽しかったです。
イノさんはもちろんお気に入りなんだけど、思いのほか木瀬さんがいいキャラに育ったなぁという印象です。
内面も外面も徐々に成長していくコミュ障キャラ……いい……! とてもいいぞ! 隙きあらば今後も自作に出していこう。
宮柳もチェルノボーグもいいキャラなんよなー。
なんか、「あれ? 俺ちゃんと女キャラも可愛く書けてね!? いいじゃんいいじゃん! いけるじゃん!」みたいな自信に繋がった一作。ただ過去作で一番、編集からの赤(修正指示、ツッコミ、要するにダメ出し)が多かった作品でもあったような気もする。ぐぬぬ。
またNPCに関してはすっかりツーカーの関係になったそこあにさんのインタビューでも語ってます! よしなに。
★講談社ラノベ文庫『ヤンキーやめろ。メイドにしてやる』 2020/2/3
「サークルクラッシャー」を読んでくださった講談社ラノベ文庫の名物編集S氏が自分に興味を持ってくれた縁で作り上げた一作。
これもNPCのときと同じで「書きたいヒロインキャラ」先行で練っていった企画で、なろうのほうで趣味で書いてた『10才にして保健室の先生とかいう、《ぐう聖母》ミナちゃん』に登場するヤンキー娘、朱雀井小碧がすごくいいキャラだったので、この子をメインヒロインに据えてなんか書きたいなぁと。とはいえヤンキー娘ってだけじゃ引きが弱いからメイド要素も足して……みたいな感じで作っていきました。
またサークルクラッシャーのときの反省「予想は裏切り期待は裏切らない」を今回は活かし、タイトルやパッケージ、ヤンキーメイドというワードから読者が期待しているであろう内容をちゃんと提供するということも重視しました。
それでエゴサしてみたら結構「期待したようなヤンキー娘でした!」みたいな声が多くて、めちゃくちゃ嬉しかったです。笑
あとこれ我ながらお仕事ラブコメとしてかなり上手く書けてると思うんだよなー……。
ラストのヤンキーメイド・ハナちゃんの大立ち回りなんてめちゃくちゃカッコよく書けたと思いますよ、ええ。
この作品もそこあにさんにインタビューして頂いたので是非聴いてちょ。
☆同人誌『先輩と後輩』 2020/12/30

→メロンブックスさんの購入先リンク。電子書籍もあるヨ!
こちらは番外編みたいなもんですが、親しい作家さんと同人サークル『七味唐辛紙』を立ち上げまして、2020年のコミケで頒布しようと思ってたら例のファッキンウイルスのせいで泣く泣く委託販売になった代物。『先輩と後輩』というテーマで七人のラノベ作家が寄稿したアンソロ同人小説です。
僕は自分自身が大学生時代にクライミングサークルに入っていて、今もボルダリングを趣味でやってる人間なので、大学のボルダリングサークルの先輩(僕)と後輩(ギャル)の話を書きました。短編ですがこれまたサクッときれいにまとまったなって感じでお気に入りです。どっかでボルダリング小説書かせてくれんかなー。
――以上、秀章全作品振り返りでした!
長い! 全部に目を通した人はもう立派な秀章ファンだわ。アミーゴと呼ばせてくれ!
なんかちょっとでも「へ~」とか「ほえ~」とか発見やら面白みやらを感じてもらえたら幸いです。
◆結び
どうにかこうにか10年間、ラノベ作家を続けることが出来ました。(今年は本出してないけど笑)
重ね重ねになりますが、これもひとえに関係者各位と読者の皆様とおかげだと感謝しております。
本当にありがとうございます。
脱兎リベンジの項目でも軽く触れましたが、デビュー当時と今の自分、作家としての心持ちはガラッと変わっています。
まず作品作りに対するモチベーションが変わりました。
昔は「俺を見ろ!」的な、自己表現というよりもむしろ自己顕示欲に近いような情念が多分にあったような気がしますが、今は「楽しんでくれたら嬉しいぜーい」って感じでしょうか。今も昔も「エンタメ志向」であることは変わらないですし、「自分のために書いている」ことも変わってないんですが、昔は「読者を楽しませることで自分の存在意義を確立させたい(切迫感)」といった感じだったのが、今は「読者に楽しんでもらえたら嬉しいから書くー(シンプル)」みたいな感じでしょうか。だからなんかたぶん、我欲ってものがなくなったんだと思います。……別に「売れなくてもいい!」とか思ってるわけではないですけどね?笑 そりゃ普通にヒット作出してお金はほしい!
あとは根拠のない自信とか全能感みたいなのもなくなりました。いや、今でも「俺天才だろ……ぐふふ」みたいな自惚れは普通にあるんですが、その一方で「まぁでも全然まだまだだね」って思いも強くある。
また昔以上に文章を書くのに体力や気力が消耗されるようになって「めんどくせー」とか思うことが多くなりました。ただそれでも、テキストを書き始めるとやっぱり楽しいし、作品の感想をエゴサしたりして好意的な声を見聞きすると、「くぅ~! こりゃやめられんわい!」となります。
……あー……。
それと……。
これはもう結構前からですが……このブログのタイトルが我ながらクサイというかこっ恥ずかしく感じるようになりました。笑
『明日に向ってガンフィンガー』て、カッコつけすぎィ~。笑
まぁまぁまぁ、それでもですよ。昔の心持ちも当時の自分にとっては正義だったし、楽しかったし、そういう心持ちであったからこそ生み出せたもの、得られたものもたくさんありましたから、OKです。
そして、そこからさらに少しずつ変化して至った今は、僕の主観では昔以上にいい感じです。
なので、いつまで続くかはわかりませんが、もう少しこの業界で楽しい思いをさせてもらおうと思ってます。
新企画も仕込み中(題材はちょっと変わってるけど、ストレートな青春ものの予定だよ!)ですので、お付き合い頂けたら幸いです。
それではまた二年後に。笑
アディオス、グラシアス、アミーゴ。
スポンサーサイト