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ベーコンサンド



 私には行きつけのパン屋さんがある。
 そこのベーコンサンドは絶品だ。サクサクの耳付き食パンに挟まれているのは、輪切りのトマトとキュウリ、レタス、みじん切りと輪切りにされた二種の玉ねぎ、噛めば肉の旨みが滲み出るベーコン……それらが決してくどさを感じさせないマヨネーズと、絶妙な塩梅の塩コショウで味付けされており、三日続けて食べてもまだ飽きが来ない。そんな逸品だった。

 昼時、家の冷蔵庫を開ける。昼飯になるようなものは見当たらないので、この日も私はその行きつけのパン屋でベーコンサンドを買った。レジに立っていたのは見慣れない中年男性だ。いつものご婦人はお休みだろうか。こちらの男性はご婦人の夫か何かであろうか。そんなことを考えながら家に帰り、早速大好物のベーコンサンドにかぶりつく――その前段階、ベーコンサンドを手にとった瞬間に、私は異変に気付いた。
 食パンの〝触感〟がいつもと違う。〝食感〟ではない。〝触感〟がだ。なんだこのペラペラふにゃふにゃの食パンは。あのサクサクモチモチの食パンはどうした。普段のベーコンサンドに使われている食パンは、普通の食パンよりも少々グレードの高いものなのだ。しかし今手にしているこれは、明らかにグレードの劣る食パンであった。
 使う食パンを誤ったのだろうか――訝しみながらもベーコンサンドにかぶりつく。
 案の定、食パンはへにゃへにゃだ。
 そして二度目の異変。
 不審感が確信に変わる。
 
「……玉ねぎが入ってねぇ……」

 そう、玉ねぎが入っていないのだ。あの、わざわざみじん切りと輪切りの2種を挟み込むという粋なはからいが、そこには微塵も見られなかったのだ。
 しかも異変はそれだけに留まらない。

「……塩コショウもかかってねぇ……」

 控えめながらも確かに味のアクセントとして重要な役割を担っていた、いわば縁の下の力持ち……マヨネーズの甘みを引き立てていたあの粗挽きの塩コショウが、かかっていなかったのだ。さながら生娘のそばかすのような、あの愛しの黒い粒粒が、ベーコンサンドのどこにも散っていなかったのである。
 そして極めつけはこれだ。

「……つーかこれ、ベーコンじゃなくてただのハムだ……」

 ハwwwwwwムwwwwwwwwwwwwwwwww

 ――失敬。取り乱してしまった。しかし聡明なる読者諸兄ならば、突如萌芽せしこの大草原にもご納得いただけよう。大好物と勇んでかぶりついたそれが、2,3グレードの下がった類似品であった時の失望感たるや、怒りや悲しみを通り越して滑稽な笑いしか出て来ないのである。

 しかしなぜこのようなことが起きたのか。
 いや、もしかしたら私の過失かもしれぬ。
 いつもベーコンサンドが陳列しているその棚にベーコンサンドにそっくりな商品が並べられていたから、私はさして注意も払わずに手にとってしまったが、よくよく商品名を見れば「ハムサンド」に変わっていたのかもしれない。(もっとも、値段はベーコンサンドと変わらなかったので、下位互換であるこのハムサンドを同じ値段で売ろうなどとはふてぇ根性であるが。勿論食材の値上がり等の事情も考えられるが、それにしても、ねぇ?という心境である)

 だがもしも、万が一そうではなく、ベーコンサンドと銘打たれてハムサンドが売られていたのだとしたら、これは今流行りの食材偽装に当たるのではないだろうか。
 なんたるちいや!
 叫びかけたが、ふと思いとどまる。
 ベーコンと称してハムを売る行為は、果たして食材偽装に当たるのだろうか。ハムもベーコンも豚肉で、製法上最後の仕上げが違うだけだ。豚肉という食材に変わりはない。となるとこの問題は、どちらかというと偽装表示の類になるのかもしれない。いやまてそもそも私の中でハムとベーコンは明確な違いがイメージとしてあるが、要はこのイメージというのは偏見にほかならないわけで、その偏見から外れた〝ハムのようなベーコン〟が存在していたとしてもおかしくはない。というか、十中八九ある。そう考えると、このハムサンドに挟まっているものはハムみたいではあるが歴としたベーコンで、ベーコンサンドの名を冠する値する商品である可能性もある。そうなると食パンや玉ねぎや塩コショウはともかく、何ら偽装はしていないから、商品の品質面での不満はあれど文句をつけるのも店側からしたらいらぬ世話というもので――。

 あばばばば話がややこしくなってきた。

 真相の究明にはさらなる調査と精査を要するようだが、面倒なことこの上ない。

 というわけで結論を簡潔に述べよう。

 ハムサンドには心底ガッカリさせられたけど何かの手違いかもしれないし長々書いた割には別に怒ってもいないのでまた買いに行きます。

 


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秀章(ヒデアキ)

Author:秀章(ヒデアキ)
11月1日生まれ。うさぎ年。

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『空知らぬ虹の解放区1~2』
『GランDKとダーティ・フェスタ』

スニーカー文庫より、
『サークルクラッシャーのあの娘、ぼくが既読スルー決めたらどんな顔するだろう』を発売中。

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